前回、「反芻:ぐるぐる思考」についてご紹介しました。「ぐるぐる思考」のポイントは、大きく3つです。

➀ストレスや困難に対する誰もが自然に行っていること
②これまでの経験から学習されたもので、いわば“くせ”のようなものであること
③『なんとかした方がよいぐるぐる思考』は、内容が漠然として抽象的に考えている

“くせ”は、無意識のうち、あるいはしっかりと意識することなく行う習慣的な行動のことです。貧乏ゆすりを考えてみましょう。貧乏ゆすりは、イライラしたり不安だったりした時に、そのような気持ちを落ち着けるためにする行動ですが、「よし、貧乏ゆすりをして気持ちを落ち着けよう」と意識をしている場合はほとんどありません。これと同じように、「ぐるぐる思考」も「よし、今からぐるぐる考えて落ち着こう」と意識していないことが多いのです。不安になったとき、落ち込んだとき、後悔したときなど、いつのまにか意識せずにぐるぐる考えてしまっているのです。

そうしたことから、「ぐるぐる思考」に対処するためには、まず、“自分がぐるぐる考えている状態に気が付く”ということが大切です。

ぐるぐる考えやすい状況を特定して、そのような状況で「ぐるぐる思考」ではなく、別の行動に置き換えていきます。暇だとついつい甘いものを間食してしまうことを止めたいとき、甘いものを食べる代わりに、ガムを噛んだりコーヒーを飲んだりする行動に変えるのと同じです。

みなさんは、どんな時にぐるぐる思考になっているでしょうか。私の例でいえば、仕事で失敗したなと感じることがあった場合、たいてい電車の中や入浴中、そして寝る前にぐるぐる考えてしまいがちです。総合して考えると、『一人でいる時間・ぼーっとできる時間』に考えてしまうのです。さらに、寝不足や疲労が溜まっているなど『体調が万全でないとき』、プライベートでも嫌なことがあるなど『ストレスが重なったとき』は、ぐるぐる思考が生じやすくなります。

ですので、電車の中では動画を見たり、夕食の献立を検索したりします。駅から自宅まで歩いている時は鬼門で、いつのまにかぐるぐる考えがちなので、地面に落ちているものを観察したり(意外なものを発見します)、家に帰るまでに10個ピッタリありそうなものを予想して、探しながら帰ったり(たとえば、数字の「5」や電動キックボード)します。お風呂では、入浴剤を入れて、その香りに集中するようにします。疲れているときは、とにかく早めに寝ます。そうやって、ぐるぐる思考に入らないように心がけています。

そして、考え方のコツとしては、「どうしてあんなことしちゃったんだろう」と抽象的に考えるのではなくて、「こうなった経緯って、どうだったっけ?」「明日、何をしたら挽回できるかしら」のように、“今起きている状況”にとどまって、どうやったら解決できるのか、ということに目を向けるようにします。いったん答えが出ると、何となくすっきりしてぐるぐる思考が止まります。

このように、自分がどんな時にぐるぐる思考に陥りやすいのかを分析して、それぞれに対して対処方法を自分なりに考えてみると、『なんとかした方がよいぐるぐる思考』に対抗できます。

私も毎回上手くいくわけではなく、ぐるぐると考えてどんよりした気分になっていることもよくありますが、意識するだけでずいぶんと違います。

ぜひ、みなさんも「ぐるぐる思考」と上手く付き合っていただければと思います。

執筆者:木ノ内(小澤)満玲(公認心理師・臨床心理士)


参考文献:
大野裕監修 梅垣祐介・中川敦夫 (2025).「反すう」に気づいてぐるぐる思考から抜け出そうー認知行動療法に基づくセルフケアブック. 岩崎学術出版社.
エドワード・R・ワトキンス著 大野裕監訳 梅垣祐介/中川敦夫訳(2023).「うつ病の反すう焦点化認知行動療法」. 岩崎学術出版社.